かつては「産業のコメ」ともてはやされ、基幹産業の1つに数えられた半導体ですが、リーマンショック以降は国内市場全体で縮小傾向が続いています。中国などグローバルな視野が必要になるでしょう。


回復傾向も見られるが、転職市場はいまだ厳しい

富士通やルネサス エレクトロニクスなどの大手半導体メーカーをはじめとした業界再編成、リストラの動きはようやく一段落しており景気回復の兆しも見えていますが、転職市場における厳しさにこれまでとの違いはありません。

特に、早期退職制度などで会社を離れた40代の半導体エンジニアがいまだ大量に転職活動を実施しており、採用枠が出てもすぐに埋まってしまうという現状があります。

そこで増えているのが、海外の半導体メーカーへの転職です。一時期、サムスン電子やSKハイニックスといった韓国企業が日本人技術者の主要な転職先として注目されていましたが、ここ1~2年においてはサムスン電子にならい、日本人技術者の採用を強化する中国企業が増加しています。これには中国での採用だけでなく、日本進出のため国内に設立された拠点での採用も含まれています。

地域別半導体市場
世界半導体市場統計(WSTS: World Semiconductor Trade Statistics)のデータを下に作成

2008年-2013年は実績、2014年以降は市場予測。中国の半導体市場規模は2014年1月-3月実績で世界市場の26%に達し、アジア市場の中では46%を占める。


海外メーカーによる採用が活発化

採用枠の多さだけでなく、条件面が良いことも海外メーカーによる採用の特徴といえるでしょう。たとえば日本企業であれば、採用の前提条件として年齢の上限が40代まで。30代の中堅エンジニアであれば、年収700万円前後というのがひとつの基準となっています。ところが中国企業では「50代のエンジニアも採用の対象とする」、「30代で年収1000万円、特別なスキルを有していれば1500万円」という条件提示が珍しくなく、採用枠を特に設けない(常に募集を行っている)という例も少なくありません。

長期的に見て先細り傾向にある国内メーカーでは、まだまだ雇用が安定しているとは言い切れません。いま勢いのある海外メーカーが求めるスキルを有しており、勤務地などの条件面で折り合えるならば、間違いなく収入アップを見込めるだけに魅力的な選択肢といえます。

もうひとつ、半導体業界の転職市場における特色として、設計開発ではない周辺業務におけるエンジニアの募集が増加しています。

このところコスト削減のため製造拠点を海外に移転したり、また販売強化のため営業拠点を海外に設けるメーカーが少なくありません。これらの拠点で必要となるのが、現地のエンジニアを教育する担当者や、海外顧客に対して技術的なサポートを提供する「フィールドエンジニア」と呼ばれる職種なのです。

まだそれほど数は多くありませんが、フィールドエンジニアに関しては国内の生産拠点における採用も出始めています。エンジニアとしてのキャリアを活かせる新たな選択肢のひとつとして、検討してみてはいかがでしょうか。


英語でのコミュニケーション能力が求められる

では今後、ますます厳しさを増す半導体業界でエンジニアが生き残るために、どういった能力が求められるのでしょうか?ここまで述べてきたように、転職市場においては、「グローバル化」が大きなキーワードとなっています。 

海外メーカーへの転職を目指す場合は当然として、もっとも重視されるのが英語力であることに間違いありません。しかも採用の現場において、その要求レベルはどんどん高くなる傾向にあります。

たとえ国内メーカーであっても、いまや製造拠点や顧客は全世界に広がっていることが珍しくありません。量産の過程でトラブルがあれば、設計を担当したエンジニアが直接現地に飛んで対応するのが当たり前。顧客のニーズをくみ上げて開発部門との橋渡しを行うフィールドエンジニアに関しても、英語力は必須でしょう。

なお実際の採用においては、「TOEICで何点を取った」ということより、どれだけ「ビジネスの現場においてコミュニケーションが取れるか」が重視されます。海外留学の経験がある方や、海外とのプロジェクトを手掛けた経験がある方は、ぜひ積極的にアピールしてみてください。

日本と中国の採用条件比較

勤務地など条件面で折り合えるなら、中国企業という選択肢も。ただし、英語などコミュニケーションスキルも必要となる。