日本の高い技術を誇る「ものづくり」の象徴として、世界をリードしてきた精密機器。
しかし近年、「高品質よりも低価格」へと需要がシフト。グローバルな価格競争の中、変革期にある日本の企業において、今、求められる人材とは?


変革に向かう精密機器業界

技術力において日本が市場をリードしている電子機器や光学機器、医療機器などをはじめとした「精密機器」。円安の影響や需要の増大を受けて、リーマンショック以降の落ち込みからは回復しつつあり、採用を昨年よりも拡大している企業も増加しています。

とはいえ製品の技術レベルが向上するにつれて、特にコンシューマー向けの製品に関しては、顧客の要求がこれまでの「より高品質・高スペックの製品」から「より低価格な製品」へとシフトしている現状があります。海外メーカーとの激しい価格競争にさらされている液晶テレビをはじめとした家電や、コンピューター用半導体などの業界における状況を見る限り、いまが精密機器業界の変革期にあたるといえるのではないでしょうか。

そのため企業においても、これまで強みとしてきた製品や技術を転用して、より競争力を発揮できる別の市場へ新規参入するという動きが見られています。たとえば光学機器メーカーが医療機器へ参入するにあたり、経験のあるエンジニアを募集するなど、業界の枠を超えた採用を行っている例も珍しくありません。
回復傾向にあるとはいえ、採用枠という点においては、まだまだ厳しい状況にある精密機器業界。エンジニアとして活躍できる可能性を広げるためにも、特定の分野だけにこだわるのではなく、自分の経験をどのように活かせるかイメージしたうえで、幅広い業界への視点を持つことが大事だといえます。

精密機器の生産額と輸出額の推移(単位:億円)
資料:一般社団法人日本機械連合会

平成26年度の精密機械の生産額は、前年度比3.9%増の1兆3685億円となる見通し。輸出額も平成21年度以降伸びている。


エンジニアに求められる役割が変化

また新規事業の立ち上げにあたっては、顧客開拓や製品の企画、販売戦略の立案といったマネジメントが欠かせません。そのため、新しいビジネスを1から作り上げていく「ビジネス・ディベロップメント」のスキルを求める企業が増加しています。より有利な条件での転職を実現するため、今後はエンジニアであってもプロジェクトマネジメントやビジネス・ディベロップメントを意識した、スキルの取得やキャリア形成を行うことが求められるでしょう。

市場の変化に伴い、エンジニアに求められる能力だけでなく、その役割も変わりつつあります。なかでも注目されているのが、「アプリケーションエンジニア」あるいは「リエゾンエンジニア」(仲介エンジニア)と呼ばれる職種です。

外資系企業が日本に進出する際には、海外にある開発拠点と顧客の間に立って双方とコミュニケーションを取り、製品の要求スペックなどを本社にフィードバックする役割のエンジニアが欠かせません。昨今では部品メーカーなどの国内進出が相次いでいることから、リエゾンエンジニアの採用が増加しています。

たとえば自動車向け部品メーカーのリエゾンエンジニアであれば、30代で年収800万円が提示される場合もあり、待遇面においても十分に魅力的といえるでしょう。

リエゾンエンジニア

本社や顧客あるいは開発拠点など双方のコミュニケーションの仲介に立つ


安定した職場として、ニッチ企業にも目を向けたい

とはいえ、厳しい競争が予測されるこれからの精密機器業界において、個々の企業が衰退していくのか、あるいは成長するのかの見極めは非常に難しい問題です。ある日突然、所属する部署が丸ごとリストラされてしまうという事態も、十分に考えられるでしょう。

そのため転職にあたっては、企業の規模やブランドだけに注目するのではなく、大手が参入しにくいニッチ分野において独占的な強みを持ち高いシェアを確保する「ニッチ企業」なども選択肢としたいところです。

ちなみに、家電業界の例でも明らかなように、業界全体が不況になると一気に大量の転職希望者があふれることとなります。つまりそれだけ、転職の条件が厳しくなるということ。当たり前のことですが、普段から危機意識を持って想像力を働かせ、早めに手を打って行動することが重要なのです。