「クラウド・コンピューティング(以下クラウド)」は、近年、IT分野において最もよく耳にするキーワードの一つです。クラウドは、設備を一新せずともオンデマンドで際限なく拡張でき、設備投資・運用コストを抑えることが可能です。そのため、複数のオフィスや従業員、顧客に分散している業務プロセスの飛躍的な効率化を図るうえでは、必要不可欠な手段と言えます。ただし、その利便性や安全性については懐疑的に見られていることも多々あります。ハッキングから機密情報を守れるのか?ITコストはトータルで見ると逆に嵩むのではないか?などユーザー企業の担当者は様々なリスクを考え、新しい技術にどうしても神経質になりがちです。ここでは主な問題点に対する解決策を事例に基づき説明し、中規模向け市場のクラウド活用に役立つツールを紹介します。思い込みによる不安を取り払い、いかにあなたの企業がクラウドのリスクを軽減し、且つそのメリットを最大化できるのかアドバイスいたします。


クラウドを理解する

クラウドと聞けば、ほとんどの人は、漠然としたイメージとして容量について思い浮かべます。一つの独立した、または巨大な存在で、クラウドを利用するすべての企業から集まるデータが蓄積されている保管場所と考えるのです。
実際には、もう少し実用的なものと言えるでしょう。クラウドは、情報や技術が集積され、数に際限なく様々なデバイス(スマートフォン、ノートパソコン、アイパッドなど)からのアクセスが可能で、更にいかなるインターネットや携帯電話通信からも接続できるのです。予算に関する課題に直面するビジネスや日々の仕事に忙殺される社員も、クラウドの活用によってストレスから解放され、より多くの仕事を遂行できるようになります。

現在、3種類のクラウド構造が存在します。

1. パブリック・クラウド

パブリック・クラウド・モデルとは、第三者的なサイトにおいて多くの利用者により共有されているものです。ひとつ理解しやすい例としてEtsy.comがあります。Etsy.comはファッション、ヴィンテージ、アンティークのオンライン“ショッピングモール”であり、別々の店舗が販売目的でそこに出店し、商品を出品しています。このモデルにおいて、それぞれの店舗のオーナーは、同じプラットフォームを利用し、そのサービス利用料のみを支払っています。一つの同じプラットフォームがすべての人・店舗に共有されている一方で、業務的処理に関してはモール・オーナーであるEtsy.comが独占しており、他の人操作することはできません。パブリック・クラウドは、三種類のクラウドの中で最もコスト効率がよい方法です。

2. プライベート・クラウド

プライベート・クラウドとは、会社のインフラストラクチャーをオンライン上で保有していることに相当します。プライベート・クラウドは、強力な財源がある企業が使用するもので、通常、カスタマイズされたシステムで、その企業のサーバーにより管理されています。このモデルは、最高レベルのセキュリティを誇り、繊細な顧客情報を扱う銀行や保険会社等によって、機密情報が外部に漏れぬよう利用されています。

3. ハイブリッド・クラウド

ハイブリッド・クラウドは、パブリック・クラウドとプライベート・クラウドを組み合わせたもので、同様の運用システムを利用します。いくつかの機能を、古いシステムに残し、共有サービスのクラウドにより引っ張ってきた他機能と統合させるシステムです。ハイブリッド・クラウドの大きな利用者の一つがNASAのジェット推進研究所(JPL)です。JPLは、チームメンバーと一般の方々とのコミュニケーションを図るため、事業システムの組み合わせの中に、複数のクラウド・プラットフォームを利用しています。

中規模企業向けビジネスにおいては、上記のうちのいずれか、あるいは全てのモデルが、IT投資負担軽減や人員不足の解決、また非効率な業務プロセスの改善に役立つでしょう。
ほとんどの中規模企業向けビジネスは、広範囲過ぎるビジネスサービスに対するスタッフ一人ひとりの非効率的な活用にすでに危機感を抱いていることでしょう。


クラウドの障壁とその打開策

2010年にIBMによって行われた調査(フロスト&サリバンによるthe IBM 2010 Global Risk Survey)によると、約20%の企業がクラウド・モデルをビジネス戦略に活用しているという現実の一方で、過去数年にわたりクラウドに関する誇大広告がどんどん極端になってきているそうです。利益とコストセーブの両面を考慮すると、20%という低い普及率は、理解しがたいものです。この誇大広告と実際の普及にギャップが存在するのは、誤った認識や実際の問題により、クラウドがビジネスの不安要因になっているからといえるでしょう。この場合、ビジネスにとって最適な方法は、解決策を実行する前にクラウドホストとこれらの潜在的問題に取り組み、潜在的リスクを考慮することです。

潜在的なリスクの要素と、その解決策について見てみましょう。以下は、IBMの調査によって定義された一般的なクラウドの問題点と、それらへの対処例です。

セキュリティ:データ流出や喪失の危険性

データに関する安全性がほとんどのビジネスにおいて最も大きな問題です。そして、世論調査においてビジネスパーソンの半分以上が、クラウドは著しく高いリスクをはらむと考えています。実際、80%近い人がクラウド環境では個人データを守ることはより難しいと考えています。それは妥当な心配事であるといえます。現在で、共有されているクラウド環境では、他のクラウド利用者にデータが漏れ出してしまう、悪意のあるクラウド・ユーザーが意図的に他のユーザーのアカウントをハッキングしてしまう、あるいはホスト企業の社員が機密データを盗用してしまう、といった可能性が存在します。又、データの移動の際には脆弱さが露見されるかもしれません。しかし、このようなリスクは、クラウドに限らず、飛行機の中にブリーフケースを忘れるように、いかなる状況下においても起こりうることなのです。</p> <p><span style=" />この問題に対する解決策
評判の高いクラウドプロバイダーはファイアーウォールや、安全性の高いログインやデータ移動など、セキュリティに関する解決策を示しています。セキュリティの追加オプションはより費用がかかりますが、企業は繊細な機密情報の部分のみに、追加支払し、強力なセキュリティを利用すればよいのです。キーポイントは、機密情報ではないものに対しては追加費用を支払わず、機密情報については追加コストを支払い保護するということに双方が同意することです。加えて、万が一、安全性が侵害されたり、情報が喪失したりした場合に、クラウドプロバイダーが提案できるバックアップや保険を明確にしておく必要があります。データは定期的にバックアップを取っておくべきであり、即時利用できるべきです。第三者であるクラウドプロバイダーと仕事をすることはリスクに感じるかもしれませんが、現実には、クラウド上で一からセキュリティとバックアップを構築したインフラにデータを保存するほうが、デスクトップPCにデータを保存するよりはるかに安全でリスクが低いのです。

追加的なセキュリティとして、強力なユーザー認証の規約とクラウド・アカウントを関連付けることができます。ユーザーのパスワードが“password”であったり、あるいは数字の100のように、多く利用されているありきたりな数字を設定した時点で、いかなるデータももはや安全とは言えません。不規則な長さ(8-12文字)で、大文字、小文字、数字、またほかの特別な記号を組み合わせたパスワードは、他のありきたりなパスワードよりも安全性がより高まります。

コントロールの喪失

IT企業の意思決定者の半数以上が、クラウド環境において第三者機関が繊細な機密データに関与することを問題視しています。この問題は、テリトリーに関するというよりむしろ、セキュリティに関する問題です。データ・セキュリティやバックアップを第三者機関に任せ、コントロールを委ねることは簡単なことではありません。クラウドプロバイダーにデータを手渡すことにより、データが適切に管理されていることを直接確証することができなくなるからです。コントロールを委任することは、いかなる意思決定者をも不安にさせる可能性があります。

この問題に対する解決策
責任感ゆえに、コントロールを委ねることで不安になり、脅威を感じることは自然なことです。これに対す解決策は、デューデリジェンス(正当な評価)です。ある企業に対してその潜在価値を審査することなしに投資しないのと同様に、施策を講じる前に、自ら選んだクラウドプロバイダーについて、入念に調査・確認する必要があります。その機関の過去の実績や、セキュリティやバックアップに関する規約を読み、データにアクセスするためのツールについて確認しましょう。それらの情報を通じて、前進するために必要な信頼が生まれます。

アプリケーションのパフォーマンス

世論調査で対象になった人の半数以上が、クラウド利用のアプリケーションのパフォーマンスに関して、多くの外部要因によって影響を受けてしまうことを理由に、問題視しています。サーバーが原因で、もし重要な時間帯にデータにアクセスできなくなったら、どうなるのでしょうか。

この問題に対しての解決策
この問題は、最悪の場合に起こりうる別種類の問題と言えます。いかなるクラウドプロバイダーもどんな時間にも100%アクセス可能であると保証することは出来ません。しかし、評判の高いプロバイダーであれば、サーバーの使用時間を示す過去の実績データを提供してくれるでしょう。多くの場合、サーバーは統計学的にもほんの少しの時間しか接続切れやオーバーロードは起きず、ほとんどの利用者は問題が起きたことに気付くことなく、最悪な場合でも少し不具合が生じる程度でしょう。
データがその企業を崩壊せしめる瞬間にアクセス不可能になるということは、ほぼありえないでしょう。実績がある、あなた自身が信頼できる会社に委託しましょう。情報こそが解決策となるのです。

ベンダーロックイン

世論調査において、およそ半数のプロフェッショナル達が問題点としてあげたのが、ベンダーロックインです。一度プロバイダーに委託したら最後、その適合性とは無関係に、そのプロバイダーから別のプロバイダーに変更することが不可能になってしまうのではないかということです。そしてそれは妥当な問題意識であると考えられます。ほとんどのクラウドプロバイダーは独自のソフトウェア・プラットフォームでサービスを提供しているがゆえ、他のベンダーに移行することが難しくなる可能性があります。これに関連して、契約が終了になったときに、データがどうなってしまうのか、という問題もあります。それらのデータは安全に保管され、外部からのアクセスは制限されるのでしょうか?

この問題に対しての解決策
多くのクラウドプロバイダーが特有のソフトウェアを利用しているのは確かです。それらは他のシステムとは相いれないもののようです。これにより、データが移動するときに問題は生じます。しかしそれは、デスクトップにおいてある社内の会計プログラムから他のプログラムへ移行するとき、またはキャビネット型の書類整理からデジタルへ移行するときに企業が直面する問題と同様です。また、それは過去数年の間に田舎の全ての医療現場において起こったことと同様でもあるのです。データの携帯性についていつも問題になります。しかし、解決できない問題とは言えません。あなたのデータが契約満了後にも安全であるという保障をすることは、契約に明記されてあるべきです。この問題に対する解決策として、不慮の事態への対策を事前に計画をしておくことが重要です。

コンプライアンスー法規制の順守

約三分の一以上程度の回答者が、公共のクラウド環境における法規制の順守を問題としてあげています。これを問題点としてあげた人の多くは、非常に厳格な制約を与えられているヘルスケア産業や金融サービス産業の人たちです。コンプライアンスとは扱いにくい問題で、プロバイダーとは対照的に事業者側がその責任を負っています。ビジネスにとって最善の方法は、これらの問題に対して潜在的なクラウドホストと共に取組み、また解決策を試行する前に潜在的なリスクを審査することです。

この問題に対しての解決策
もしあなたの企業が安全なデータ管理についての規約に従わなければならないときには、実際のデータ保管場所でセキュリティの予防措置に漏れがないかを確認するのと同様、あなたの選択したプロバイダーがあなたのビジネスをする地域、及び取り扱うデータの所在する地域すべての規約について把握しているか確認しましょう。パブリック・クラウド、プライベート・クラウド、ハイブリッド・クラウドのどれがあなたの企業のニーズに最も合致するのか注意深く決断しましょう。もし予算とデータ保護がもっとも重要であるならば、機密情報に対するプライベート・クラウドと共有されたクラウド環境でのアプリケーションコードを持ち合わせたハイブリッド・クラウドが最適です。それにより、厳しいコンプライアンスを維持しながらコスト削減やアクセスのしやすさといったメリットを手にすることができるでしょう。


クラウド戦略を構築する

クラウドへの移行を検討することは、新たなビジネスを始めるのと同じくらい重要なことです。最善策は、いかなる問題も事前に洗い出し、改善策を見出し、継続可能なプロバイダーの選択肢を狭めていくことです。そして、リスクを審査し、軽減するため、自身の選択肢をよく検討することです。以下はクラウドへの移行準備の際に考えるべき主なポイントです。

スケジュール通りにデータをクラウドに移しましょう。事前に計画することが大切です。クラウドの規模についてクラウドのプロバイダーに尋ねましょう。

フォローアップをするようにしましょう。データがクラウドに移されたら、プロバイダーと定期的に利用可能時間、バックアップ、及び追加の懸念点について確認しましょう。

コスト、利益、リスクを検討し、順序立てて論理的に説明しましょう。

信頼と知識を基に、賢くプロバイダーを選びましょう。

適切なレベルのセキュリティを提供するプランを選択し、必要に応じたレベルのセキュリティのみを購入しましょう。

安全なユーザー認証についての規約をつくりましょう。

どのようにあなたのデータが保管されていたとしても、それらのデータは安全でなければなりません。幸いなことに、評判の高い企業はデータ保護に精通しています。

多くの場合、クラウドへの移行により、企業の従業員は流動的かつ独立的に業務に励むことができます。それは就業時間やハードコストなどの重大なコスト削減を意味しています。クラウド・コンピューティングは、チームメンバーがいかなるプロジェクトでも、複数地域間で協力することを可能にします。レポートやコミュニケーションが強化される一方で、ペーパーワークや会計処理の遅れは最小限に留めることができます。チームリーダーは、プロジェクトのコストが急騰する前に、その潜在的な変化をよく認識するための最新の現地レポートを利用することができます。その結果、すなわち必要に応じてリアルタイムの情報をいつでも得ることができ、限られた予算の中で働く中規模向け市場ビジネスにとって非常に価値あるものとなるのです。

Quarter 2, 2013